風洞実験
1986年、山梨県富士河口湖町に建築業界では当時日本最大の大型回流式境界層風洞を建設しました。『風のアトリエ』と名付けた風洞実験施設では、日本を代表する多くのプロジェクトの風洞実験を行ってきました。国内では唯一の独立した風のコンサルタント会社として世界からも一目をおかれ、多くの見学者が訪れます。
大型風洞で予測する
建物と街並みの未来の風
『風のアトリエ』は建築に特化した回流式境界層風洞です。ロケットや自動車の設計では古くから利用されてきた技術ですが、建築の分野でも必要不可欠となっています。大規模な建物が建設されると、『ビル風』が顕在化し周辺の街並みに大きな影響を及ぼします。また、建物が高層化するにつれ風の力が地震力を上回ります。風洞実験では将来計画されている建物を模型で再現し、街並みに応じた風を建物にあてることで、周辺への風の影響や建物自体への風の影響を調べることができます。
未来に起こる風を予測し、建物の耐風安全性を調査することが風洞実験の大きな役割です。
風工学研究所 風洞実験施設風のアトリエ
風洞実験施設では、一周約84mの風路に軸流ファンで発生させた風を回流させます。実験を行うターンテーブルには最大直径2.5mの縮尺模型を設置することができます。
- 風洞本体
-
形式 回流式境界層風洞 測定部断面 幅3.1m X 高さ2m 測定洞長さ 16m - 風洞スペック
形式 DC30kWモーター、直径3m軸流ファン - 主な計測機器
- 熱線流速計
- サーミスタ型風速測定システム
- 多点同時風圧測定システム
- 風力天秤装置
- ロッキング振動天秤装置
- レーザー可視化装置
風のアトリエで可能な実験
街並みに吹く風の特性を再現するためには平均風速、乱れの強さおよび乱れのスケールの高さ方向の特性を一致させる必要があります。これらの分布を調査するため熱線流速計による風速測定実験を行います。建物の建設に伴い周辺に対するビル風の影響を調べるためサーミスタ風速計による風速測定実験を行います。高層建物や大スパン構造物の外装材風荷重を評価するため多点同時風圧測定実験を行います。
高層建物の風荷重の評価および風揺れによる居住性の評価のため多点同時風圧測定実験または風力天秤実験を行います。建物の空力不安定振動を調査するためロッキング振動実験またはフル弾性模型実験を行います。レーザーによる流れ場の可視化実験を行います。
-
01
風速測定実験
ビル風の調査では、風の強さと頻度により評価を行いますが、大規模な建築物については多くの場合、設計時に風洞実験で建築物の建設による風環境についての影響を検証します。街並みを再現した模型を作製し、主に歩道やデッキなど人が歩く場所に風速を測定するセンサーを設置します。発熱したセンサーに風をあてることで風速を測定することができます。
-
02
風力実験
建物の設計風荷重を求めたり風揺れによる居住性を検討する場合には建物全体の風力が必要となります。風力実験は多点同時風圧システムまたは風力天秤装置により建物全体の風力を測定する手法です。建物の構造特性と、風洞実験で得られる風力から応答解析を行います。
-
03
可視化実験
空気の流れは直接目で見ることができません。そこでスモークを流し、レーザーを照射することにより流れの速さや方向を浮き出す技術が可視化実験です。流れ場を可視化することで現象を把握することが容易となります。
-
04
振動応答実験
建物が高層化しスレンダーになると空力的に不安定な振動を引き起こす可能性が高くなります。建物にとって空力不安定振動は避けなければならない大きな問題です。振動応答実験では実際の建物の構造特性を縮尺模型で再現し、風をあてて空力不安定振動の有無を確認します。