耐風設計
大規模建築物の設計において、耐風設計が重要であることは言うまでもありません。日本における自然災害の主な原因の一つである台風は、被害が広範囲に及ぶため、その影響は甚大です。安全で持続可能な建築物を実現するために、風洞実験という最も信頼性の高い手法で、建物の耐風設計について考えていきます。
耐風設計の提案
建物の供用期間が数十~100年程度であるのに対し、日本における設計体系では50年から100年に一度吹くような強風に対しては弾性設計で行い、500年に一度吹くような強風に対しては人命に対する安全性を確保することが求められます。建物の安全性を確保することは安全なまちづくりをするうえで基本的なことです。
また、高層建物では風揺れによる居住性の問題があります。そこに住む人々が将来にわたり不安を感じることなく暮らし続けられるために、建物の設計がどうあるべきかを真剣に検討する必要があります。
私たちはそのような風の影響を設計者と話し合い、風洞実験により理想的かつ合理的な耐風設計を提案していきます。
耐風設計における検討課題
一般的な建物の耐風設計では大きく分けると建物の外装材の設計、構造骨組みの設計、風揺れによる居住性の3つの項目を検討します。特殊な建物では空力不安定振動の検討が必要な場合があります。
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外装材の設計
建物の強風被害の多くは外装材の破壊によってもたらされます。外装材の被害は二次被害を誘発するため、建物の設計では大変重要です。
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構造骨組みの設計
建物の供用期間は数十年から百年程度と言われております。長い期間の間に建物の骨組みの健全性を確保することが重要です。
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風揺れによる居住性
高層建物では常に風揺れが生じます。日常的な風揺れに対してそこに暮らす人々が不快を感じないように設計者とともに検討を進めていきます。
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空力不安定振動
スレンダーな高層建物では空力不安定振動が発生する可能性が高まります。建物の設計では空力不安定振動を発生させないようにすることが必要条件となります。
調査方法の選択
設計者と目的を共有し、議論を進めながら最適な調査方法を選択します。
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01
風圧調査
外装材と構造骨組みの設計を行うため、風圧調査を実施します。建物壁面の風圧を測定することで外装材風荷重の評価を行います。また、測定した風圧を時々刻々積算することで建物全体の風力が得られます。
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風力天秤による風力調査
高層建物の構造骨組み用風荷重を得るため、風力天秤による風力調査を実施します。建物が複雑な場合や、空力不安定振動の調査を行う場合には風力天秤による実験を選択することが合理的です。
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振動調査
空力不安定振動の有無を確認するため振動実験を実施します。通常はロッキング振動実験を行いますが、建物の高次の振動モードが問題となる場合にはフル弾性模型を用いた実験を行います。